山崎 貴監督インタビュー
―子供の頃から『ルパン三世』がお好きだったそうですね?
横浜の親戚の家に遊びに行ったとき、初めてルパンの映像を見て衝撃を受けて「なんという大人っぽいアニメーションだ。さすが都会すげぇ!」と都会とルパンの印象が一体化して、自分の中でルパンが都会的なものの象徴の一つになりました。『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(78)も予告編のお祭り感が素晴らしくて、ついにルパンが劇場に来る!ってワクワクして、地元長野の劇場に見に行ったのを覚えています。その後も、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)や、テレビシリーズの「死の翼アルバトロス」「さらば愛しきルパンよ」など、宮崎駿監督の作品が特に印象に残っていますね。
―今回、監督・脚本としてこのプロジェクトに参加された経緯は?
最初は作品について相談に乗るという形で関わっていたんですが、そのうちに監督をやってみないかと言っていただいて。僕自身は白組の所属なので、なかなか難しいかなとも思ったんですが、ルパンがすごく好きですし、ルパンを手掛けるチャンスなんてめったにない。「やりたいです」と言ってやらせてもらいました。この数年は週に一回、(本作の主なアニメーション制作を行う)マーザ・アニメーションプラネットに通って、アートチーム、アニメーションチーム、アセットチーム……と、連続で全チームとミーティングをしてへとへとになって帰る(笑)、という繰り返しでした。
―脚本はどのようなイメージで書かれたのですか?
日本の実写映画だと、なかなか世界を股に掛けた話は作れないですが、CG映画だったらそれができるし、やってみたかったんです。架空の場所ではなく、外国のどこかを舞台にして、『007』シリーズのような世界を股に掛けた活躍を描こうと思いました。あとは、ルパン三世は変装が得意だとか、銭形はどこまでも追いかけてくれるとか、そういうルパンならではの気持ちの良いお約束事も大事にしたいと思って入れ込みました。
―レティシアのキャラクターについては?
自分の好きなことを語るときに目を輝かせる人にしたかったんです。考古学に関して語りだすとき、目をキラキラさせていて、本当に好きなんだっていうのがわかる。でもその気持ちが抑制されているのを、ルパンが解放してあげる話にしようと思いました。実は、初稿ではレティシアはもっと強かったんですよ。格闘技もできて(笑)。
―脚本が12稿、ストーリーリールを3度作られるなど、今回かなりストーリーを練られたようですね。
マーザはそういうハリウッド式の作り方をする会社で、それも参加したいと思ったきっかけの一つなんです。脚本があって絵コンテを書いてCG制作をするという流れではなく、声優さんの声も入れた緻密なストーリーリールを作って、それをいろんな人に見せるというプロセスを繰り返す。ですから、脚本にもいろんな人の意見が入ってますよ。印象としては合議制に近い形で作っていった感じがしますね。
―ゲスト声優の方々のキャスティング理由を教えてください。
広瀬すずさんは声がすごくいい。僕は彼女の魅力を支えている一番は声だと思っているんです。演出すると、これはいろんな人が言っていることですけど、その頭の良さに驚かされました。「こうしてほしい」ということを一度にいくつ言っても、一切脚本に書いたりすることなく「はい」とだけ言って、次にそれを全部やってくれるんです。藤原竜也さんと吉田鋼太郎さんは、ゲラルトとランベールにシェークスピアっぽい大芝居があるので、ぜひにとお願いしました。CG映画には、ちょうど舞台のようなお芝居が合っているような気がするんです。セルアニメーションほど声に情報量があるとちょっと邪魔な気がするし、普通のお芝居ほどそぎ落としたものだとちょっともの足りない気がするので。
―本作にはルパン初期から関わっているレジェンド級のアニメーターさんも参加されているとか?
多くはないんですが、何シーンかはレジェンド級のアニメーターの方たちにも加わっていただいています。“これぞルパン”という絵があがってくるので楽しかったですね。今回そういうアニメーターの方とか、オリジナルのルパンの声優さんと仕事ができたりするのも、ルパン好きとしてはたまらない時間でしたね。
―音楽も大野雄二さんで。
それも嬉しかった!僕は角川映画世代なので、大野さんが音楽を担当された『犬神家の一族』(76)、『人間の証明』(77)、『野生の証明』(78)……あの頃の曲がすごく好きなんです。もちろん『ルパン三世』の曲もすごく好きで、刷り込まれているから、その大野さんと『ルパン』でご一緒できるなんて夢みたいですよね。特に好きなのが、『カリオストロの城』の主題歌「炎のたからもの」なんですが、大野さんに「「炎のたからもの」を超えてください」っていうむちゃなお願いをして、今回の主題歌を作曲してもらいました。いい曲を作っていただいて嬉しいです。
―モンキー・パンチ先生とのやりとりは?
僕はお会いできてないんですよ。完成作をご覧いただいたときにお会いできればと思っていたので、残念です。要所要所でキャラクターを見ていただいたりストーリーを読んでいただいたりしましたが、いつも「よろしくお願いします」とか、「楽しみです」というメッセージをいただいて、すごく自由に制作させてもらいました。様々な名作を生み出した『ルパン三世』の系譜の端っこに3DCGという新たなフォーマットで加われることを本当に光栄に思っています。
―最後にメッセージをお願いします。
ルパンファミリーのカッコよさやかわいらしさを詰め込んで、できるだけ皆さんの心の中にいるルパンに近づけるよう努力はしたつもりなので、純粋に楽しんでもらえれば嬉しいです。